経営者は原点を語れ

B社研修会の目的を聞くと、親会社の役員が子会社のトップに就くとのことで、親会社からのしばりや圧力がかかるのではないかと幹部が危惧しており、この機会に経営スタンスを"はっきり、すっきり"させたいとの意向であった。

研修会でB社社長は「親会社の中長期戦略には100%準拠するが、親会社とはいえ特別扱いや偏重はしない。わが社に移植するのは親会社の"イズム"のみだ。よって幹部が共有すべきは、そのイズムを継承したわが社の経営理念である。この理念を唯一の判断基準としマネジメントしていただきたい」と喝破した。

A社のイズムの概要は次の通りである。
清廉活発な企業風土を基盤に成長し続け、これをもって業界全体の発展に寄与する。

そのために

  1. 礼儀・礼節を重んずる
  2. 方針・目標・通達は即、実践
  3. 決定事項が不本意であっても全力投球
  4. 出来ない理由を考える前に出来る方策を考え、打ち出す
  5. 結果に対して責任を持ち、愚痴・言い訳はしない

理念が人を高みへ希求させる。社風は即席では創れない。経営者・経営幹部は日々、企業原点を"真剣"に語るべきである。

経営者の決断力

~経営者が意思決定の際に陥る症状とは~

優柔不断症

経営は意思決定の連続であり、決定は常にリスクを負う。しかし、決めるべきことを決めないことは、会社を潰す結果となる。したがって、優柔不断で意思決定をしない経営者は失格である。

放し病

戦略や方針が決定されるが、その実行度が評価も見直しもされない決めっ放し病。さらに放置されると方針も仕組みも「自然死」する。

~決断力~

決定事項の不実行

経営者が意思決定するが実行されない。決定は実行のスタートであり、実行されないことは組織に問題がある。とくに幹部人材と経営トップに意識のギャップがあり、現場に指示、情報が伝達されない。

朝令暮改

現代の経営にはスピードが要求され、朝令暮改は意思決定に必要だとも言われるが、マイナスになる場合も多い。経営の意思決定が変われば、現場はそのことにより振り回される。決定事項に信頼感がなくなり、組織の実行力も弱くなる。

一般的な経営マネジメントの意思決定は判断力である。一方、決断とは意思決定する材料不足の中で、企業の存続を左右する大きなリスクをともなう判断、意思決定をすることである。経営者の陥る症状を意識した的確な決断力を養成しよう。

物選び・人づくり・金づかい

企業経営は「物選び・人づくり・金づかい」である。時代が激変しているが、この三要素は変わらない原理原則だ。

1.物選び

企業経営の原点「WHAT」。何を事業とするのかが物選びである。自社の売上がダウンしているとすれば、市場環境・顧客ニーズにマッチングしていない証明である。企業は環境適応業であり、市場環境・顧客ニーズに合わせた「商品・技術・サービス」を開発・開拓することだ。

2.人づくり

事業戦略・商品戦略・技術開発戦略など立派な戦略を策定しても、「実行」するのは「人」である。人によって戦略成否は決まる。誰を担当にして、リーダー・責任者を誰にするか。人づくりの「妙(みょう)」である。
人は「経済的豊かさ」「精神的豊かさ」を求めて会社に入社する。経済的とは、賃金水準が他社と比較して若干高いレベルが必要であり、精神的とは社会的にも意義のある仕事をして、社内外から存在を認められることが豊かさにつながる。よくやった者への評価・分配のしくみが「人づくり」を左右する。

3.金づかい

企業の赤字は収益と経費のバランスが取れなくなった結果である。「出るを止めて、入るを計る」金づかいが必要。
財務三表と言われる貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュフロー計算書(C/F)は企業経営の通信簿である。借入金は限度(月商3カ月分)を超えていないか、総資産利益率は何%か、自己資本比率は何%か、資金繰りに不安はないか?金使いの確認が必要だ。

発想の転換と新事業

この厳しい経済環境下でも「ピンチはチャンス」と考え、儲かる仕組み作りや次の事業を考えている経営者は多くいる。
A社は新事業を展開するのが非常にうまい会社で、社長にそのポイントを聞いてみたところ、以下の2点が大切とのことだった。

  1. 中小企業の幹部・社員は新事業を考えることはできても、何をやるかを決めて推進することはできないので、社長が新事業(何をするか)を決める。
  2. 何をするかを決めたら、新事業担当者に任せきるのではなく、自立できる所までは社長も一緒に汗をかいてすること。

社長が何をやりたいかがわからない時に、自社の幹部・社員の知恵を借りて実行するケースのほとんど失敗

経営者がまず「何をやりたいか?」「何のためにするのか?」をよく考え、社員と一緒に行動することが大切である

捨てる戦略

P.F.ドラッカーがその著書の中で、「あまりにわずかの企業しか、昨日を切り捨てていない。そのために、あまりにわずかの企業しか明日のために必要な資源を手にしていない」と述べている。
急速に進行する陳腐化を踏まえ、成果を期待できない分野からの資源の引き上げを組織的に行い、資源を体系的に集中することが、成長戦略をつくる上での基本なのである。

「捨てる戦略」

1.コスト削減による、損益分岐点引き下げ戦略

  1. 「顧客との取引条件の見直し」「仕入先の変更・集約・取引条件の見直し」等を行い、変動費の削減を図る。
  2. 「組織のスリム化」「多階層の見直し」「営業拠点の統合」「人件費の削減」「借入金返済による金利削減」「設備費用の削減」等を行い、固定費の削減を図る。

2.止血による、収益拡大戦略

  1. 本社費配賦前の赤字事業から撤退し、不採算を排除する。将来を見据えた健全な赤字事業であれば、撤退の対象とならないものもあろうが、客観的にみて「今、あえて推進する必要のないもの」「利益率の改善が見込めないもの」「トップの思いだけのもの」「片手間なもの」は撤退の対象となる。
  2. 採算の取れていない「顧客」「商品」「エリア」からも撤退する。 これらの不採算を放置したまま事業を推進すると、本来注力すべき部分に経営資源を分配出来ず、事業の競争力が低下する。

捨てる」ことにより、今よりも収益体質になることを頭では解っていながらも、

  • 「過去からのしがらみ」
  • 「成功体験の踏襲」
  • 「現状を客観視出来ない体質」により、その意思決定がなかなか進まない企業は実に多い。

新たな可能性に経営資源を分散させる前に、日常を客観視し、「捨てる」による徹底的なウエイト・コントロールに取り組まれてはいかがだろうか?

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