なぜ未来の損益予測を立てるのか?

中小企業を経営するみなさまにとって、銀行等から 「将来の損益の見込を教えて下さい」と言われた場合、損益計算書をベースに今後5年分の売上や原価、経費その他の各項目を数値で入れていくものが一般的であります。
銀行等から提出を求められていてもその大半の方は

「将来のことがわからないのに、それをつくることなどできない」

「そんなものは机上の空論であり、やったところで何も変わらない」

と考えることで、作成が止まってしまう、もしくはあまり考えずに何となく記入して、とりあえず出してしまう、となっているように感じます。

今の世の中、3カ月先のことすらわからないことは事実です。 しかし、未来のことがわからないことと、その計画を立てられないことは、全く別のことです!

なぜ中小企業は将来の損益予測を立てる必要があるのか

◎そもそも、未来予測というのは変動していくことが当然であり、予測→検証のプロセスを何回も繰り返していくことで徐々に、予測と実際との誤差を減らしていくものである。
◎その未来予測の変動に対応していくことが経営にとって重要であり、経営改善を行うべき項目になり得るからです。

例えば、一番予測が困難な「売上」について、もう少し具体的にいうと、
①現時点で想定される、会社の状況を構成する要素を項目別に分解。

②それぞれの項目の変動を見越して、それをもう一度当てはめ、再構成する。

③変動が有った場合には、その変動要因を分析して、さらに再構成する。

以上を繰り返しを行っていきます。具体的には、どの市場、どのお客様に、いつ、どのようなアプローチをして、いつ頃いくらの受注が見込めるかを、読み込むことです。

未来の損益予測はどのようにして立てるのか?

ちなみに、予測の1割や2割の部分は違ってもよいのです。
悪い方にズレたとしても、その原因が分かり、対応ができるのか、別の手法によりその穴を埋められるのかを考え、実行に移せるのかが重要なのです。
小売店の売上の一例を挙げてみますと、例えばこのように売上を分解できます。

潜在顧客数×見込顧客化率×来店率×購入率×購入単価 = 将来の売上

この式は、このように考えていくことができます。

  1. 潜在するお客様の数が「潜在顧客数」
  2. 潜在顧客数の内、チラシやホームページ等で見込顧客化した率を掛ければ「見込顧客数」が分かり
  3. 見込顧客数と来店数の比率から来店率が分かり
  4. 来店数と購入数の比率から購入率が分かり
  5. 購入数に平均購入単価をかければ売上、となります。
  6. また、リピート率が向上すれば、将来の売上をより多く確保できます。

例えば、
※チラシを配れば「見込顧客化率」や「来店率」を向上させられるのではないか。
※店舗のレイアウトや導線を変えることで、購入率を向上させられないか。
※お客様との接客手法を変えることで購入単価やリピート率を上げられないか。
あくまで例ではありますが、一つ一つの項目に対する取組を考えていくことになります。
このようなことは、なんとなくみなさんやっているのではないでしょうか。

■なんとなくやっていても果たして計測しているのか

しかし、今それぞれがどのくらいの比率で、今まで行ってきた施策によってどのくらいの変動が発生していて、どこが改善可能なのか、というところまでは意識していない方が多いのではないでしょうか?

重要なことは、1%の数値が2%になれば、それは1%の違いであっても売上への影響度は2倍、という目線を持つこと。 また上記の例で言えば「見込顧客化率」「来店率」「購入率」「購入単価」「リピート率」の5つがそれぞれ10%改善するだけで、1.1×1.1×1.1×1.1×1.1≒1.61、約1.6倍の売上になる、ということです。

◎より効果を上げるため、まず最初に手をつけるべきはどこなのか
◎やり方を変えてみた際に、どのように変動したか

これをできるだけ簡単に・正確にできるのかどうかがポイントになります。

それぞれの数値を見出すことができれば、売上目標を出すことも、売上から逆算して、それぞれの数値目標を出すこともできます。

一つの数値を向上させる、ということを目標とすれば、そのために何をすれば達成可能か、という考え方から、元々は数値であった将来の目標を行動計画に落とし込むこともできます。

ここまでできれば、将来の目標は机上の空論などではなく、○○の行動ができれば、最終的に目標数値を達成できる、という本物の経営計画にまで持っていけるのです。

資金繰りに追われてしまうと、このようなことができなくなってしまいがちですが、資金繰りを改善させるためには、最終的には収益力の改善が必須です。

一度、売上の構造を分解し、項目別に計測することを考えてみてはいかがでしょうか。

数値目標はどうすれば行動目標に置き換わる?

まず、前項にて述べた、売上の構造の一例を、もう一度挙げます。
◎潜在客数×見込顧客化率×来店率×購入率×購入単価=将来の新規売上

この将来の新規売上に、リピート客からの売上を足したものが、将来の売上になります。

ここで考えるべきは、この項目の大半が、「顧客の状況や行動」によって構成されている、という点です。

1.まず、売上の数値を、それを構成する顧客の数や、質に変換する

売上は通常、単価×数と考えられ、これは当然外してはならない基本であります。
最初のフェーズの客が、それぞれの比率によって最終的に購入顧客になり、購入単価によって売上になる構造ですから、逆にある売上を実現するために必要な客の数や単価に変換することができる、ということです。

2.その顧客数を取り扱うために、必要な業務プロセスと人員数を考える

定義された顧客の数から、それに対応するための業務プロセス(仕事の取組手法)や人員の数を考えます。

例えば、これまで100の購入顧客数を想定していたものを120にするとなれば、業務の効率化を行うなり人員を増員するなりの対応が必要ですし、例えば「来店率」の増加で20の顧客増加を目指そうと思えば、広告宣伝方法について対応することが必要になります。

単純にそれを行った場合(例えばシステムの導入や人員の追加、広告回数の増加)にはコストが発生しますので、利益として極大化されるように調整を行わなければなりませんが、重要なことは「それだけの効果が得られなければならない」ことが明確になるということです。

また、「顧客を月に○○人対応し、売上を△△円上げられるような人でなければ、採用してはいけない」という、明快な採用の目標にもなるのです。

また、業務プロセスというと難しいイメージになりますが、こちらはまずは「スケジュール」と考えていただきたいと思います。
「一月に○○人の対応をしなければならないが、他に□□の業務もある」と予測された場合に、無理に全部何とかしようとすることはお勧めできません。

社長自身であればなおさらのこと、無理は長く続きません。体が健康であればこそですから。とはいえ、誰しも一日は24時間しかありません。となれば、当然

  • より簡単にすること
  • 他の社員や外注先に任せられるものは任せること
  • より「自分自身で行うべき」仕事に注力すること

が必要であり、これを考えることが中小企業にとっての業務プロセス改善の根幹になります。

3.人の活動目標としての行動計画に整理する

ここまで行うと、必然的に「行動計画」にまとめることができるようになります。必要となった要員数に対して、「それぞれが、どのように動けば必要な顧客数に到達できるか」を行動に置き換えるのです。

例:売上の構造を
アポ入れ客×面会率×提案率×成約率×購入単価 = 将来の売上とした場合、
面会率が20%(アポイントを申し入れたうち、面会できた率)
提案率が40%(面会したうち、提案できた率)
成約率が25%(提案したうち、成約出来た率)とすると、
1件の成約を得るために必要なアポイントの申出が1÷0.25÷0.4÷0.20=50 50件となります。

従って、必要な顧客数が5件であれば250件のアポイントを得るための行動が必要となり、今ある未開拓顧客リストが150件ならば、不足分の100件をどのように増やすのか、例えば紹介依頼をもう一度行えないか、それはいつまでに何件できるのか、というように、今目標達成のために行うべき行動に変換することが可能になります。
一方、250件ものアポイントを入れる時間が物理的に不可能と判断されるのであれば、「面会率」他の数値を向上させて対応する決断を行い、よりその項目の実施が得意な社員に対応を集中させることや、やり方を変える等の改善を考えることで、必要なアポイント数の方を削減させます。

上記の例で言えば、例えば面会率が25%になれば
1÷0.25÷0.4÷0.25=40
となり、5件の成約に必要なアポイント数は200に減少します。
当然、面会率を向上させるわけですから、これまでよりも確実に面会できる、例えば紹介を頂くことにより注力することが必要である、と判断できます。
そうなれば、行動目標は、「まずはこれから2か月で紹介元を50件確保する」
そのために何をするか、というところまで具体化することができます。

こうして練られた行動計画は、銀行に対する説得力はもちろんのこと、何よりも自らが「何をすればよいのか」理解できる上に、「これができれば目標数値が達成できる」→「会社がここまで再生できる」行動と数字が連動した素晴らしい計画になります。

ぜひ、一度ご自分の会社でも目標数値→必要な顧客数に置き換え→必要な業務プロセスと人員に置き換えすることで、行動計画に落とし込むことをお勧めいたします。

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