損益計画のみの経営計画の落とし穴

利益はほぼ達成できたのに、お金が増えていない!

利益はほぼ達成できたのに、お金が増えていない。逆に、減っていることがある。
こんな疑問を感じたことはないでしょうか?
売上・利益に重点を置いているから、経営者の意識が売上・利益重視に傾いてしまい、儲けることへの意識が希薄になっていると感じています。

~売上利益重視の一例を出しますと~

前期で
年間固定費  5,000万円(償却なしと仮定)
変動費率   60%(売上原価が全て変動費、それ以外全て固定費とします)
売上高    2,500万円(損益分岐点ギリギリ)
売上債権回転日数 (30日)
在庫回転日数   (30日)
仕入債務回転日数 (40日)という企業があるとします。

※損益分岐点売上高=固定費÷(1-変動費率)

この企業が今期、売上高利益率5%を目標として、固定費・変動費率は変わらず、売上のみで達成しようとした場合、 14,285万円の売上が必要となります

※目標売上高=固定費÷(1-(目標変動費率+目標利益率))

仮にこの計画を達成できた場合、売上・利益としては
売上高 14,285万円
変動費 8,571万円
固定費 5,000万円
利益   714万円 (売上高利益率5%)

となり、目標を達成できて、良い結果が出たとも言えますが、営業マンが売上を重視するあまり、取引先の言いなりになり、

平均回収サイトが10日伸び、売上債権残高が多くなってしまった。
(売上債権回転日数 30日 売上債権1,027万円
   ↓
 売上債権回転日数 40日 売上債権1,565万円)

・売上を増やすために取扱品目を大量に増やしたことで在庫が膨れ上がり、入庫から売れるまでの平均日数が10日伸び、在庫高が多くなってしまった。

(在庫回転日数30日 在庫616万円
   ↓
 在庫回転日数40日 在庫939万円)

・取扱品目を増やすために仕入取引業者を拡大させた結果、平均支払サイトが5日縮まってしまった。
(仕入債務回転日数40日 仕入債務822万円
   ↓
仕入債務回転日数35日 仕入債務822万円)

売上・利益を重視する上で、上記3点が結果として出た場合、会計の「発生主義の原則」による損益においては、全く影響はでませんが、

「儲け」の視点から見た時に、
売上債権投資増 538万円
在庫投資増   323万円
仕入債務増   0円
合計投資増   861万円

となり、一方で損益計算上の利益をそのまま現金回収額と見た場合、

714万円(回収)-861万円(投資)=△147万円(儲け)

となり、この企業は、事業を拡大し利益は出ているのに、お金が減ってしまう(儲かっていない)状態に陥っています。
よって、経営計画は貸借・損益だけで作るのから一歩進めて、投資・回収の視点からも、計画を作成すると、とても良い経営計画になることでしょう。

おすすめの記事