安定経営のためのヒント

原因と手段でピントを合わせよう!

部門方針、個人取り組み事項を作成する際の注意点を紹介したい。
会社の方針には「中期ビジョン」→「年度方針」→「部門方針」→「チーム方針」→「個人取り組み事項」という流れがある。

まずは「中期ビジョン・年度方針」と「前期の部門の反省」を踏まえて落とし込んでいく。
その反省時、"原因"と"結果"でとらえることがポイントである。反省の多くは、「売上高が昨対95%と未達であった・・・」とか「粗利益率が○○%と低迷した・・・」という"結果"ばかりを注視した内容になっているが、本当に大切なのは"原因"である。 それを反省欄に記入し、来期の対策へと活かすのである。

取り組み事項(実施事項)におけるポイントは、"手段"と"目標"で押さえる。
取り組み事項(実施事項)を作成するとなると、"目標"ばかりを記入する人が多く、その手段がよくわからな いケースが非常に多い。 例えば、「新規開拓○億円」、「新規訪問○件」、「コストダウン10%」等々。意気込みとしてはよくわかるが、上司やトップはどうやって達成しようとしているのかが一番知りたいのである。『"手段(プロセス)"がわからないのに、"結果"は信じられない』である。

来期、何を重点に動くか?会社の利益向上のために、今、何が大切か?また、どうしたら持てる力を発揮できるか?──"原因"と"手段"を踏まえて考えていただきたい。

経営のバックボーンに歪みはないか?

経営方針について聞くと

  • 「毎年内容があまり変わらない」
  • 「経営計画書は年に数度しか見ない」
  • 「実行したかどうかの評価をしていない」
  • 「そもそも具体的に何をするかが明確となっておらず、評価できない」

経営とは
トップの考えを、幹部を通して、社員全員の協力(日常活動)により実現させること。その設計図を個人の行動計画まで落とし込まなければならない。

組織の設計図

  • 経営理念(存在目的、使命は何か)
  • ビジョン(夢、目指すべき姿は何か)
  • 戦略(勝てる場の発見と勝つための条件づくり、競争優位の確立)
  • 目標(中期経営計画の作成)
  • 組織(戦略を実行する体制づくり)
  • 年度計画(全社方針を部門方針⇒個人目標へと落とし込む)
  • 実行と成果(PDCAにより計画を確実に実行)
  • 評価・分配(行動・スキル・成果を評価、給与は高く人件費は低く)

ビジョンや戦略が不明確な企業は、目先の業績が中心の行動となり、企業体質そのものを変えていくという発想が不十分となる。単年度経営の弊害であり、目指すべき企業像へ体質強化させていく力、将来の業績のための行動がとれていない状態となる。

自社の、戦い方の設計図として再設計が必要ではないか、今一度見直していただきたい。

継続的改善の視点とは?

企業が持続的成長を遂げるには、当然だが「継続的改善」を実践していかねばならない。それを展開しない限り、企業は永続など不可能である。では、"継続的改善"を実行するポイントは何か。組織・方針・人材という3つの視点から考察していきたい。

1.<組織>顧客指向の組織を形成する

不確実性の高い事業環境において、何より優先すべきは顧客ニーズに対する誠実な配慮であり、そうしたニーズに応えられる柔軟性を、組織がどの程度備えているかを見極めることが重要である。

2.<方針>イノベーションを喚起する

継続的改善には、時代環境に適応するためのイノベーション(技術革新)が必要となる。
イノベーションを引き起こすツールとして、「方針」は大変有用である。

花王の「商品開発5原則」

  1. 社会的有用性の原則
  2. 創造性の原則
  3. パフォーマンス・バイ・コストの原則
  4. 調査徹底の原則
  5. 流通適合性の原則

3.<人材>実行力を高める

継続的改善には、人材の実行力が欠かせない。この実行力とは、経営者・管理職を問わない必須科目である。実行力に必要なのは、リーダー自身が組織に情熱を持って深く関与することだ。この"関与する"とは、建設的で一貫した質問を投げ続け、問題の核心をつかむことを言う。

どうして資金計画が必要なのか?

決算書は重要でありながら決して万能ではなく、以下のような点には留意が必要である。

<貸借対照表>

  • 財産状況は分かるが、決算日当日の状況しかみえない
  • 借入金の返済計画がみえない

<損益計算書>

  • 投資の負担と回収状況がみえない
  • 借入元本の返済負担がみえない

つまり貸借対照表と損益計算書は、法人税などの税金計算には向いているが、資金不足を回避するための分析には向いていないのである。

資金不足を回避するには、以下を明示する予想資金計画(キャッシュ・フロー計画)が必要である。

◆予想収入で全ての支払ができるか、また余裕資金はいくらあるか

◆いつ、いくら現金が不足するのか

予想資金計画は資金不足を回避するだけではなく、たとえば営業・製造などの各部門にキャッシュ・フロー目標を設定させることにも活用でき、在庫削減にも繋げることが可能である。
これらの理由からも資金計画は必要である。

大局観・戦略発想を鍛える?

自社の幹部の力量について、大局観や戦略発想の乏しさを嘆く経営者は少なくない。そもそも幹部は所属部門のマネジメントが主たる業務であり、日常の中で自社が置かれている環境や戦略展開について考える機会は皆無に等しい。大局観・戦略発想を鍛えたいならば、それ相応の機会提供が必要である。

~A社の事例を紹介したい。~

A社では毎年10月、来期方針の策定に向けたプロジェクト(名称:戦略策定プロジェクト)が発足する。それは、経営陣の指名を受けた各部の幹部・中堅社員10名程度で構成され、10月から12月にかけて3C分析(顧客・同業他社・自社の分析)、所属業界の動向分析、中長期ビジョンの確認、今期方針の実行状況チェック、SWOT分析などを行う。

プロジェクト会議は週1回のペースで開催され、普段は自部門の業務に没頭しているメンバーが、自社全体のことをさまざまな角度から分析する。
その分析内容は経営陣に上申され、1月初旬に開催される社長の年頭所感発表会でオープンになる。その内容と社長の年頭所感を踏まえ、各部の部門長は自部門の来期方針を作成するのである。
プロジェクトのメンバーは、年によって数名が入れ替わるため、数年内で少なくとも一度は、全ての幹部が全社的な視点から自社を分析し、戦略策定をする機会を得る。

そしてそのプロジェクトが、部門横断的な情報交換機能と、経営陣が志向しているビジョン・戦略・方針の理解促進機能を発揮していることに感銘を受けた。

各社で是非展開していただきたい素晴らしい取り組みである。

経営組織形態(機能別組織と事業別組織)

会社規模が小さい中では、権限を経営トップに集中し、強いリーダーシップと統率を発揮できるというメリットがある。

しかし規模が大きくなったり、職場が地理的に拡散した場合、経営トップが直接業務を把握できなくなる。すると現場との間にコミュニケーションギャップが生じ、正確・迅速な意思決定やその実行が困難になり、本来、機能別組織形態が持つメリット自体がデメリットになってしまう。

このような機能別組織の限界を打破しようと、次に生まれてくる組織形態が事業別組織である。

経営トップが持っている権限を各事業部のトップへ大幅に移譲し、各事業部があたかもひとつの会社を運営しているかのようにする。事業編成の基準としては、製品別、顧客別、地域別で部門化するのが一般的である。

組織形態に正解はないといっていい。それぞれの形態を自社に当てはめた場合に発生しうるメリットとデメリットを予測し、次の手を打っていただきたい。

非常事態時の経営計画を策定せよ

これからの時代を生き残っていくためには、どのような経営計画が必要なのであろうか。
非常事態時の経営計画書を策定する際のポイントは、次のとおりである。

<見直しすべき着眼点とその内容>

販売・仕入・生産・資金・人員・投資・組織計画、関連・協力先との関係について、それぞれ見直しをかける必要がある。それぞれの内容については、営業収支で○ヵ月赤字が続いた場合は、○○までコストダウンを図るといった具合に、時間軸と実行内容を明確にして策定すると良い。
従来の経営計画とは、成長していくために目標を立てていけば良いものであった。すでにその考え方は過去の産物である。時代の流れが急に変化したとしても、それに合わせた計画をしっかり準備しておけば非常事態を乗り切り、これからの時代に成長もできるであろう。
この機会に「非常事態時」を乗り切れるような経営計画を策定していただきたい。

おすすめの記事