資金繰りで気を付けたい財務ノウハウ1

まとめての借換え?

毎月の返済金額を、借換えによって減額することができます。しかし、借換えを行うにしても同じ銀行内で行うべきです。

例えば、A銀行の1.5億円の借入の明細が(ここではプロパー融資か保証協会保証付融資かは考えないこととします。)
9,000万円 残り返済回数30回 毎月300万円返済
4,000万円 残り返済回数20回 毎月200万円返済
2,000万円 残り返済回数10回 毎月200万円返済
合計、毎月700万を返済しています。

これを、3,000万円上乗せして1.8億円で全部を借換えし、返済回数を60回とすると、毎月返済金額は300万円となり、借換えの効果が出ます。
(この場合、条件変更とみなされ格付が下がる可能性もありますので、そうならないようあらかじめ銀行と話合っておきます。)

このように、借換えは同じ銀行内で行うべきです。なぜなら、借換えにより別の銀行の融資を返済すると、その別の銀行としては、恥になり、おもしろくないからです。
銀行に、企業がケンカを売ることになり、その銀行との関係が悪化します。

また、融資を受ける銀行は、できるだけ多くすることが基本です。
理由は、

  • 1つの銀行が1社に対して融資できる量は、リスク分散の観点から限りがある。
  • 1つの銀行だけだとその銀行が融資を渋った時に打つ手がなくなる。

日本政策金融公庫・民間銀行・信用保証協会間の情報のやりとり

(Q)

当方アパレル関係の小売りで開業21年目の個人事業主です。
ただいま地元信用金庫(1社)で4口(1口はプロパー、3口は保証協会付き)と日本政策金融公庫で2口の借入があります。
3年ほど前までは業績もそこそこで両庫とも融資依頼を断られたことが無く、お願いする度に何らかの形で融資を実行してくれましたが、同業の身内(経営は全く別)の倒産もあり、信金はH18年3月を最後に再三の融資依頼にもかかわらず、融資を出してくれなくなりました。

その倒産による保証人債務(約300万)をかぶってしまい、貯蓄や保険を取り崩したり、妻の親に無心をしたり、幸いなことに長年取引のあるメーカーの協力(仕入掛率のダウンや売れ残り品の引き取り、買掛金支払いの延長など)で何とかやってきました。
インターネット販売をH18年より開始し、実店舗での来店客数・売上減少にも関わらす、昨年はトータルで開業以来最高の売上高を出し、融資を断り続けられた信用金庫も2年半ぶりの今年8月に市の小口資金で500万(保証協会付き)を実行してくれました。
しかし、その資金も現在は、返済や買掛金の決済・新たな仕入用運転資金であっという間に底をついてしまいました。
そこで毎月の返済額があまり変わらない日本政策金融公庫で借入(借換え)をしたいのですが・・・・・
H19年度は申告書も以前より改善され、H18年8月の融資分と、あと4ヶ月ほどで返済完了する計2口の融資残の合計もMAX時の半分以下となりました。
ただし、昨年の10月と今年の1月の2回、前回の融資実行から間もないことと、信金を含めた借入残が多いとのことで、融資依頼を断られた経緯があります。
この夏の信金での融資と時期が近いため、その融資を受けたことが日本政策金融公庫でのマイナス材料にならないのかが不安です。
日本政策金融公庫と他の一般銀行や信用保証協会の情報のやりとりはあるのでしょうか?

(A)

日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫・旧中小企業金融公庫など)と、民間の銀行や信用金庫、信用保証協会間では、

日本政策金融公庫―民間の銀行や信用金庫→情報のやりとりなし

日本政策金融公庫―信用保証協会→情報のやりとりなし  

民間の銀行や信用金庫―信用保証協会→オンラインの情報のやりとりはないが、民間の銀行や信用金庫は、信用保証協会に対し、どこの銀行でどれだけの保証を行っているか照会をよく行っているとなります。
信用金庫で融資を受けたことは、直接は日本政策金融公庫では分かりません。
しかし日本政策金融公庫はおそらく御社の銀行通帳等の提出を要求してくるので、それで分かってしまう可能性があります。もしくは日本政策金融公庫に提出する御社の借入一覧や試算表などでも借入事実を知られてしまう可能性があります。
また、御社は手元預金を潤沢にしていく必要があります。あなたは、「借換え」を考えているようですが、新たな融資が受けられ、それと合わせ既存の融資を返済しないですむのなら、それにこしたことはありません。
第一に、手元の預金を増やすことを心がけてください。

親族のしがらみ

中小企業の中には、親子・兄弟・親戚など、親族が多く関わっているところも多いかと思います。
親族で固めた経営のメリットは、会社の目標に一丸となりやすいところでしょうか。
ただ、デメリットも多いのが同族経営です。
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同族の役員や社員などは、なかなか辞めてもらうことが、できません。
仕事をしっかりやってくれてるとは言えないが、親族であるから、しがらみがあって、会社が危機的状態になっているのに、辞めてもらうこともできない、そのようなケースは多くあります。

対策:

  • 会社に関わる親族を集めて、親族会議を行うのも手です。
    会社の窮境を打ち明け、どうやって会社の立て直しを図っていくか、経営者だけでなく親族間で問題を共有することにより、親族も協力的になってくれることが期待できます。
    今まで仕事にやる気がなかった親族社員が、やる気を出してくれるかもしれません。
    親族会議では、会社の立て直しのために、経営者以下、体制を固め、一丸となって会社再生に進んでいくことを確認します。
  • このままでは会社が倒れてしまうことを訴え、赤字の黒字化のためには人をスリム化することが必要であることを訴え、協力してもらいます。
    後に遺恨を残さないのは無理がありますが、何も話し合いしないで一方的に辞めてもらうより、じっくり話し合った上での方が、その後すっきりすることでしょう。

注意!
同族企業の経営者の方、やりにくさはよく分かります。しかし、危機的状況だからこそ、会社存続のため、経営者としてのリーダーシップ、それと決断力が求められるのです。

旧債振替

旧債振替という用語は、銀行から融資を受けている会社の経営者でしたら、覚えておきたい用語です。
旧債振替とは?
信用保証協会保証付融資(以下保証付融資といいます)で受けた資金を、その銀行の既存の融資の返済にあてること、を言います。

新規の保証付融資で既存の保証付融資を返済(つまり借換え)することは、企業・銀行・信用保証協会での事前の打合せの上、よくあるケースなのですが、新規の保証付融資で既存のプロパー融資(ビジネスローンもプロパー融資の一つです。)を返済するのは、後々大きな問題となり、信用保証協会は銀行に代位弁済することを拒否するのです。 なお、同じ銀行のプロパー融資を返済してはだめですが、別の銀行のプロパー融資を返済するのは、旧債振替とはなりません。

【旧債振替の例】

  • 保証付融資を受け、その資金で分割返済のプロパー融資をまとめて返済した。
  • 保証付融資を受け、その資金で一括返済のプロパー融資を返済した。
  • 保証付融資を受け、その資金で、手形割引を以前行って不渡りになり銀行から買い戻し請求されている手形を買い戻した。

【今回の緊急保証制度で保証がおりやすくなった今、心配していることがあります】

  • 企業にとっては、プロパー融資が保証付融資に置き換わっていくことになり、保証付融資の枠が少なくなり、不利になるのです。銀行は逆に、プロパー融資が保証付融資に置き換わっていくので貸倒れリスクが少なくなり有利になります。
  • 保証付融資は、プロパー融資より審査が通りやすいので、なるべくプロパー融資を優先させて、保証付融資の枠は後々のためにとっておくのが、銀行つきあいのセオリーです。
  • 相談にこられる会社にも、旧債振替ギリギリとなっているケースが見受けられます。
    そのような事実があるのであれば、そこを銀行に対する交渉のカードとして企業側が使えるのかもしれません。

消費者金融4社より300万円借り入れがあります。保証協会の審査は通りますか?

(A)
信用保証協会は個人信用情報は見ないので(見れる状態にはあるが見ない)個人で消費者金融を借りているということは分からないでしょう。(絶対ではないですが)。
消費者金融のことは気にせず、信用保証協会保証付融資を申し込んでみてはいかがでしょうか。

保証協会に代位弁済してもらった場合、借り手側の有利になる事と不利になる事を教えて下さい。

(A)
信用保証協会に代位弁済(代弁)されるとは、信用保証協会保証付融資が、延滞になってリスケジュール交渉を行わずそのままほっておくと、保証協会が企業の代わりに全額返済(代位弁済)して、債権者が銀行から保証協会に移ることを言います。
代位弁済を行うと、有利になることは、リスケジュールの段階に比べ支払いが楽になることです。
リスケジュールの段階では減額した後の元金返済金額に加え、利息は全額支払わなければならないですし、また保証料も、融資残高が残っている分、支払っていくことになります。
一方代位弁済後は、元金と利息を合わせた額をベースに、いくらずつ保証協会に返済していくかを決めるので、支払いは一気に少なくなります。
代位弁済を行うデメリットは、その保証協会での残高が残っているうちは保証協会から新たな保証が受けられないこと、代位弁済した銀行においては今後融資を受けることができないこと、また不動産担保を入れていれば競売に移行することが通常であること、保証人に取り立てがいくこと、となります。そのため、守りたい不動産であればそれを守る対策、また保証人の資産状況を見た上での守り固めを早いうちに行っていく必要があります。

信用保証協会保証付融資の流れ

協会付融資の流れのイメージは1.~8.になります。

  1. 融資を受けたい企業から、協会融資の申込みがなされます。
  2. 担当行員が借入申込書を作成して、「渉外担当⇒渉外役席⇒融資担当⇒融資役席⇒支店長」と借入申込書が回覧されて支店内決済がなされます。(所要日数イメージは3日程度)
  3. 支店内決済で本案件の取扱いを認める場合は渉外担当行員が取引先に支店内決済が下りた旨を伝えて、協会の申込用紙に署名捺印をいただきます。
    書類を預かってから金融機関の所見に取引先の取引状況や業況などを記入し、職印(銀行の支店長印)を押印して協会に書類を送付します。(所要日数イメージ3日程度)
  4. 協会に書類が届き保証課の担当者が審査に入ります。事前審査として申込人の協会利用残高・既保証返済状況を確認します。仮に、今回の申込金額+既保証残高の合計が保証限度額超過の場合や直近1年間において月超え延滞が定期的に発生したり、保証申し込み時点で延滞がある場合は保証限度額内での再申込みや延滞解消をしない限り審査はしてくれません。
    次は申込み案件の本審査に入りますが、申込金額が企業規模に合っているのか、お金の使い道の妥当性があるのか、直近の決算状況・決算から3ヶ月を超えている場合は試算表を精査して申込人の返済可能性を判断します。また、許認可対象業種の場合は許認可取得の有無や有効期限を必ず確認します。
    以上の内容を総合的に判断して問題ないと判断した場合は上司の保証課長に申請を上げて決裁がなされます。 (所要日数イメージは一概には言えませんが、2~3週間程度が一般的と言われております。)
  5. 保証決定のお知らせについては原則、申込銀行に保証書を送付します。(所要日数イメージは3~5日程度)
  6. 保証書が申込銀行に到着してから融資係が銀行本部に融資の稟議書を作成します。(所要日数イメージは3日程度)
  7. 本部の審査部が稟議書の審査をします。(所要日数イメージは2日程度)
  8. 本部稟議が可になって融資実行になります。(所要日数イメージは2日程度)

この一連の流れを見ていただいても分かるように、協会をからませた融資の場合は通常のプロパー融資と比較しても3.~5.の部分の工程が必要になりますので、2~3週間程度の時間が余分にかかってしまいます。

このように融資実行までにどうしても時間を必要としてしまう協会付融資ですが、4.の時間を短くする方法がないわけではありません。

信用保証協会に行ってみよう

  • まずは保証協会に定期的に訪問するように心掛けて下さい。
  • 銀行員は融資先企業のことを全て理解している訳ではありません。
  • その中で銀行員が、融資先企業のポイントを協会に上手く伝えることができなくて、保証協会から保証が得られなかったことをよく聞きます。
  • ですからこのようなことがないように、年に1回は決算書ができ上がった段階で、必ず訪問をするように心掛けて下さい。

定期的に保証協会に訪問して、自社の内容を直に伝えておき融資申込みをしていれば、協会の担当者も濃い情報収集ができるようになりますので、審査スピードが速くなる場合があるのです。

(Q)
私は東京都内で内装工事業を営んでおります。
年商は1億6千万円程度で、現在借入れ残高として信金に1,900万円と日本政策金融公庫に300万円程があります。
返済は何とかこなしてきましたが 取引先の倒産や赤字物件の工事や未払い金が増え、下請け業者への支払いの遅れが出てきました。
そんな中、税務署から5年前の申告漏れを指摘され 重加算税を含め700万円程度納めろと言ってきました。
納付計画書も作成しましたが、毎月の納付金額が少なすぎると、受付けてくれません。
銀行から借入れて納めようと思いがんばってますが税金の未納部分で信用保証協会からOKの返事が取れません。

(A)
税金の未納があれば、信用保証協会の融資審査に引っかかってしまいます。
この場合、700万円をどこかから調達して税金の未納部分をなくし、保証付融資を借りる、しかありません。
もしくは税務署との交渉においては、月30~40万円程度は、納付金額がほしいところですし、それを認めさせるにも経営計画により税務署を納得させられる納付計画書にしたいところです。
それにしても、年商1億6千万円ですから、借入総額は5,6千万円ぐらいあっても普通です。それが現在、2,200万円しかない、一方でいろいろな方面で未払いがある、ということは、あなたの会社の資金繰り対策がうまくなされていない、ということが想像されます。 借入はもっと可能であったにも関わらず、起こすべき借入れをせず、そして資金繰りが厳しい。
ここは、財務管理体制の整備を考えるべきだと思います。
今回の件をきっかけに、今一度、自社の財務管理体制を見直してみてください

大都市に進出している地方銀行をねらう

地方銀行の東京支店、大阪支店など、大都市に進出している支店は、その銀行で融資量を稼ぐ役割を担っている支店、という位置づけである場合が多いです。

例えば四国地方の銀行は、大阪に支店を多く出しています。
なぜなら、地元の四国では融資を出すところが少なく、大阪に出ていって大阪の企業で一定の売上規模の企業に融資を出すことにより、融資量を稼いでいます。
融資量が大きくなると、利息収入が多くなります。つまり融資量を稼ぐことによって、銀行の一番の収益源、利息収入を稼ぐことができるのです。

例えば、愛媛県の銀行の大阪支店があるとします。

  • 愛媛県に工場がある大阪本社の会社
  • 社長が愛媛県出身である大阪本社の会社
  • 愛媛県の会社と大きな取引のある大阪本社の会社

などが、その愛媛県の銀行の大阪支店と取引しやすいのです。

あなたの会社が東京・大阪など、大都市にあるのであれば、このようなつながりを考えて、地方銀行で進出してきている支店との取引をねらってもよいでしょう。

その支店としても、地元とつながりのある企業であれば、そうでない企業より、取引開始の言い分を、本部に伝えやすいのです。

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