経営上の組織論を考える

日本人は"団体戦"で力を発揮する

企業の将来を見る場合、1年後であれば決算書、5年後であれば商品、10年後であれば人材と言われている。

「企業の寿命は30年」と言われるように会社は潰れるように出来ているものであり、努力、工夫を怠らず管理をしなければ、継続発展できるものではない。トップとベクトルを合わせ、しっかりと築いていく人が幹部である。

1.トップと方向感覚を合わせる

トップならどう考え、どう判断するのか。なぜトップはそう考え判断したのか、掘り下げて考える習慣をつける。

2.ワンランク上の仕事をする

ワンランク上の仕事をするためには、自分の仕事を部下に任せないとオーバーワークとなってしまう。ワンランク上の仕事が出来ない幹部の共通点は、自分で仕事を抱え込んでしまうことである。

3.戦略発想を鍛える

トップとベクトルを合わせ、重点を絞り込み、やるべき事を明確にする。NOW(今の責任を果しながら)・NEXT(次の手を打ち)・NEW(将来を考える)が大切である。

4.バランス感覚を養う

経営バランスが崩れると破綻してしまう。そうかと言って、バランスをとったままでは成長できない。あえてバランスを崩し、いかに大きくバランスさせるか。その復元力が大切である。

  • 攻めと守り(売上と利益、利益と経費、資産と負債資本のバランス)
  • 環境変化(市場・需要・ライバル動向と自社のバランス)
  • 時間(将来ビジョンと現実のバランス)
  • 経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報の効率的なバランス)

厳しい時代を勝ち残るために求められる幹部は、経営意識のある部門経営者である。 これらを踏まえ、経営者の視点で考え、行動できる幹部を目指していただきたい。

当たり前のことができる組織づくり

A社は、産業用機器のマニュアルなどを専門に印刷・製本する年商8億円、従業員40名の印刷会社である。

創業以来、大手企業を顧客に持つという安心感からか、社員の間には危機感がほとんどなかった。営業担当者は顧客から注文が流れてくるのをただ待つだけの存在であり、工場は生産性を全く考慮しない職人集団であった。遅刻はする、始業と同時に生産スタートしない、気分次第で印刷するものを決める、何がどこにあるか分からない倉庫には在庫の山というありさまだった。まさに「当たり前のこと」ができない体質の企業であったと言える。業績も赤字、しかも債務超過という危機的な状態であった。

現社長の代になって信賞必罰の厳しい姿勢で経営に臨んだ。

これにより、遅刻の撲滅や計画通りの生産という基本的なことが定着した。 業績も黒字転換した。

「3S活動(整理・整頓・清掃)」を導入

3Sを行うことにより、職場は必要なものがすぐに取り出せる合理的な場所となり、また徹底継続することで、良い習慣が社内に形成されることとなった。また、仕事をしやすいように工夫をするという改善意識も芽生えた。これによりA社の企業体質は大きく好転した。

3S活動という少し遠回りに見える取り組みを通じた方が、結果的には早道の場合もある。一度、試してみてはいかがだろうか。

幹部社員を昇進させるポイント

幹部社員昇進の最大のポイント
「経営者の価値判断に近づいた」と経営者が感じた時である。

重要なのは「売上が大きく落ちたことに対する危機感を、どれだけ幹部社員が持てるか」である。 つまり「マーケットをどう見るか」である。

その年だけの傾向なのか、今後もこの傾向が続くのか。続くのであれば、消費構造が変わってきているのであり、マーケットの縮小は進んで行く。
その場合、ここで来年の夏に向けての抜本的な対策を打たなければ、今期の業績だけでなく、来期の業績にも大きく影響するのである。

背負っているものが違う中で、トップと全く同じ価値判断基準を持つのは難しいが、近づかせることは出来るはずである!

企業に「適正サイズ」はない

適正サイズを追求するのは、「都心で従来モデルのまま商売を続けると、いずれ固定費が収益を圧迫する慢性病に陥りかねない危険があるからだ」

売上・粗利益が一定なら、固定費負担だけが増えれば利益は圧迫される。 そこで、固定費を減らすべく、適正サイズへとシフトしようというわけだ。環境が変われば、固定費も変動し、適正サイズも変わる。

ある記事で挙げられている食品スーパーは、いずれも、従来よりも店舗を小型化する方向へ向かっている。固定費を減らすという観点では、当然のことだ。

食品スーパーの場合、店舗のスクラップアンドビルドができる。だから、店舗を小型化しつつも、出店により、企業規模そのものは、拡大することができる。

食品スーパーにとって、店舗は事業単位の一つに過ぎない。事業単位の適正サイズを追求するにしても、それがすなわち、企業としての適正サイズにつながるわけではないのだ。

事業単位の適正サイズという概念はあっても、企業としての適正サイズという概念は、存在しない。「大きくするとつぶれる」のは、適正固定費サイズを超えた事業単位の存在を放置するからなのだ。

管理の単位を細分化

ある程度の事業基盤と売上規模があれば、赤字を黒字化するのは、あまり難しいことではない。新規事業を首尾よく成功させる方が、よほど大変だ。

要は、儲からないことをやめて、儲かることだけをやる。いわゆる「選択と集中」を図る。これもまた、戦略策定が求められる。華々しく成長発展の姿を描くことだけが戦略策定なのではない。

「儲からないことをやめて、儲かることだけをやる」という赤字脱出のセオリーを実行するには、「儲からないこと」「儲かること」を区別できるように、管理の単位を細分化しなければならない。

「どこから手をつけたらよいか、わからない」となるのは、実は、管理の単位が大くくり過ぎるからなのだ。しかし細分化することで、その「どこか」を明確にすることができる

管理の単位を細分化することで、ドンブリ勘定では見えなかったものが、見えてくるようになる。
「どこから手をつけたらよいか、わからない」のなら、まずは管理単位の細分化から手をつけること。

魅力ある会社づくり

社員が会社に不満や不信を抱いて、お客さまの期待に応えられるわけがない。顧客満足(CS)の実現を望むなら、社員満足(ES)を優先し、魅力ある会社作りを目指していただきたい。

魅力ある会社の第一の条件

「経営者が魅力的であること」小企業の場合は、経営者に起因するところが大である。

魅力ある経営者とは?

「若さ」・・・ 事業への「志」「情熱」「バイタリティ」などから来るものだ。

「包容力」・・・ 自分に対する徹底的な厳しさと他人に対する寛大さ、温かさから生まれるものだ。つまり人間の器の大きさである。それが強烈な求心力であり企業の魅力でもある。

魅力ある会社の第二の条件

「会社の将来性」 会社の将来性は何によって判断するか。
⇒一般的に「収益性」「生産性」「安定性」など。

しかしこれらの指標は、会社が過去に打った戦略の結果である。企業成長力の要になるものは、事業開発投資・商品開発投資・人材育成投資などの戦略的先行投資ができているかである。
成長する会社は、事業開発・商品開発費として売上高の2~3%、人材育成費は人件費の2~3%を予算化して、計画的に実施している。

やりきる組織への変貌

ほとんどの経営者は「マネジメントにおいて"PDCA"が大切」と認識しているであろう。だが多くの会社がP(計画)とD(実行)で終わっている。ではC(チェック)とA(改善)を推進し、階段を一歩一歩上るように、積み重ねるマネジメントをしていくにはどうすればいいか。

会議の議事録にある。

項目は「問題点」「対策」「担当」「期限」「チェック」の5項目のみ。
会議において挙がった問題点や取り組むテーマなどを「問題点」の項目に記載し、それに対する実行具体策、担当、期限を記載。チェックとは担当者の実施をチェックする者で、通常上司になる。

この議事録を次回の同会議において全てチェックし、完了したものについては削除、やり方を変えるべき項目については修正、新たな事項は追加する。このようにして、常に議事録を加筆修正し、やるべきことは何か、マネジメントすべきことは何かを常に明確にしておく。

「議事録のおかげでプレッシャーは大きくなったが、やるべきことが明確になった」

「誰がいつまでに何をやる」と文字で残されると、逃げ場がないためプレッシャーは大きくなる。しかしチーム会議では、リーダーからの微修正はあるものの、やるべきことと期限は自分で決めるので、モチベーションも高く維持できるのである。

このように議事録は、PDCAを推進する上で非常に効果の高いツールである。

組織に活力を与える12ステップとは?

経営方針とは?
あるべき未来を実現するために、この1年の戦い方を共有すべきものである。不透明だからこそあるべき姿を明確にし、組織に活力を与える必要がある。

ステップ1

存在価値の再確認
わが社がなくなれば誰がどのように困るのか。この1点を常に明らかにする姿勢が方針策定のスタートになる。

ステップ2

ビジョンの設定
あるべき姿を具体化する。企業経営は厳しいマラソン競争であるが、ゴールのないマラソン競争が存在しないのと同様、目的なき経営があってはならない。

ステップ3

先見する
過剰と不足、主役交代などの変化・進化の潮流を正しく認識する。

ステップ4

現実の直視
顧客は変化、進化する以上、企業価値と顧客価値には常にギャップが生まれる。この事実から経営者は逃げてはいけない。

ステップ5

目標の設定
設定目標は2つ。1つは中長期的な到達目標。そしてもう1つは短期的な勝てる目標の設定である。中長期ビジョンの実現には、勝てる組織が必要でなる。それは勝ちグセから生まれる。なぜなら勝つことにより強くなるからである。

ステップ6

戦略の策定
どのポジションでNO.1となるかを明確にする。そのために「やらないことを決める」ことが欠かせない。これが戦略である。

ステップ7

組織化を行う
組織は戦略に従う。誰がやるかを明らかにする。

ステップ8

年度経営方針の策定
上記7つのステップを踏まずして策定した経営方針で、1年間組織が戦うことは難しい。

ステップ9

実行具体策の策定
具体的ステップと6W3Hは欠かせない。この際、大切なのは『プラン2』の準備である。これから実施する具体策を『プラン1』とすれば、それで達成できない場合の策。それが『プラン2』である。

ステップ10

方針管理の実施
少なくとも四半期に一度は方針管理を実施し、進捗状況を正しくチェックしなければならない。

ステップ11

修正と実行
目標未達の場合は、直ちに『プラン2』を実行に移さなければならない。
方針書は作品ではなく、目的達成の手段である。

ステップ12

信賞必罰

構造転換期において、正しく方針を策定・運用する企業が「勝ち組」となるのだと認識したいものである。

社員の「不安感」を「不足感」へ

先行きの見えない不安な時代だが、社員の「不安感」を「不足感」にうまく転換することで、元気に活動している企業の事例を紹介したい。

T社の顧客が属するマーケットが今後激減していくことが予想されるなか、社員は不安感を抱えていた。

そのため、今後の対策を検討する場が設けられた。会議に参加した社員の発言を要約すると「会社が方向性を示してくれないから、どう動いていいかわからなくて不安である」というものだった。これに対して社長は激怒した。

なぜなら、常日頃「どういう新しいお客」に「どういう自社の特殊工法」を提案するようにと、口酸っぱく言い続けていたからである。それが全く理解されていないのかと社長は嘆いた。
このような事態になった原因は、トップの出した方針が具体的な形で個人の日常活動にまで落とし込まれなかったことにある。会社の方向性をより具体化する方策を検討することとした。

主な内容

  1. 新規案件の売上利益目標を明確にして、現状の5年計画に織り込んだ
  2. その数字に基づいた個人毎の毎月の行動数字(新規受注件数、新規提案件数、新規訪問率、新規に割く業務時間の目安等)を設定し、月次管理を行った

社長は「個人別の数値計画を必達すれば、必ず成長を継続できる」と力説した。 目の前の目標が明確になれば、そのギャップを埋める努力は可能である。まさに「不安感」を「不足感」にうまく転換できた好例と言えるだろう。

企業体質改善の着眼点 全社で取り組む5S活動

5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字から出来ている用語であり、ビジネスの世界で広く普及しているが、単なる社内の美化活動と誤解されていることが多い。5Sの真価は企業体質の改善にあると言える。

5S活動はその運用次第で、リーダー人材育成や組織風土改革を実現することが出来る。

全社的5S活動の成果

  • 組織としての全社員の意思統一
  • 管理職者と中堅クラスのリーダーシップ向上
  • チームワークの強化
  • 方針や業務、在庫の見える化
  • ムダの削減による業務およびスペースの効率化・・・など

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