銀行融資でやってはいけない財務ノウハウ

節税と銀行融資

あなたの会社が、銀行から融資を受ける機会が多く出てくる可能性があるなら心にとどめておいていただきたいことがあります。
それは、「節税第一に考えない」ということです。

あなたの会社の顧問税理士は、期末になると、税金を安くするための対策をいろいろ提案してきませんか?税金を安くするということは、逆に言うと、利益を減少させる、ということになります。

銀行が融資を審査するに際し、一番注意深く見るものは、あなたの会社の純資産がいくらであるか、銀行は一番、見るところです。この自己資本を大きくすることが、銀行融資を受けやすくする特効薬となります。

その自己資本が、節税によって利益がほとんどなかったり、赤字になったりした場合、銀行の融資審査は、必然的に厳しくなります。

  • 例えば自動車。必要があるならまだしも、節税のために必要でない自動車を購入したり、高額の自動車を購入したりすると、現金が無駄に流出するので資金繰りに影響が出ますし、それを借入金でまかなえば、将来の借入枠をせまくしてしまうことになります。
  • 節税のための保険は、決算書を悪くしてしまうので、融資が必要な会社であれば、やめた方がいいです。

無理に経費を作ってまで落とさないというとです。
安易に「節税、節税」と考えないでください。自社の状況をしっかり把握した上で、利益を優先させて融資を受けやすくするか、融資が必要でないので節税対策をとるか、考えてください。

銀行融資でやってはいけない財務ノウハウ

A:売上1億円 利益5百万円
B:売上1千万円 利益5百万円
どちらの企業が大きな金額で融資を受けやすいか?

答えは、Aです。
Bの方が、利益率は高く、一見融資を受けやすいようにみえますが、銀行が融資をしやすいのは、売上が大きいAの方です。

確かに、銀行の格付が高いのは、利益率の大きいBです。
しかし、例えば銀行に2千万円を申込んだ場合、銀行はAに対しては、「売上1億円だから、運転資金として2千万円ぐらいは必要だろう。」
という考え方をしますが、Bに対しては「なんで売上1千万円なのに、融資が2千万円必要なの?」という考え方をします。

ただ、売上を大きくしたばっかりに利益率を低くして格付が下がってしまうことは問題ですし、また売上を自社で計上するのであれば、その分、回収リスクも大きくなります。バランスを考えていくことが大切です。

銀行から支援を受けられない会社 その1

業績が悪い会社
業績が悪い会社は具体的に、以下の要件にあてはまる会社です。

1.利益が赤字である会社
利益とは、特に営業利益。経常利益を指します。
赤字である会社は、利益により融資の返済をすることが難しくなります。そうなると、融資が返ってこないことを心配し、銀行はそのような会社に融資をしなくなります。
2.債務超過である会社
債務超過とは、決算書の貸借対照表における純資産の部合計がマイナスの会社ですが、そうでなくても、不良売掛債権、不良仮払金などがあり、実質的に純資産がマイナスである会社も、ここに当てはまります。
債務超過の会社は、倒産の黄信号が出ています。そんな会社に銀行が融資をするのは難しいでしょう。
3.赤字・債務超過とまではいかなくても、低迷している会社
現在、赤字もしくは債務超過ではなくても、業績が低迷している会社は、いずれ赤字・債務超過となる事態が予想されます。
近い将来赤字・債務超過となる会社に、銀行が融資をするのは難しくなります。

しかし

上のいずれかに当てはまる会社でも、融資を思うように受けられる可能性を高める方法があるのです!
以下の2つの方法です。

  • 赤字もしくは債務超過であっても、実態よりも業績を良く見せる決算書を作る。
    (粉飾決算を作るというわけではありません。粉飾決算ではなくても、決算書の作り方によって業績を良く見せることができるのです。)
    また、最近決算書を提出済みの会社でも、決算書の内容よりも実態の業績が良いということを、銀行にうまく説明する。
  • 近い将来、業績が良くなって、赤字もしくは債務超過の状態から脱することができることを、銀行に説明する。

■このいずれかの方法をとることによって、今まで業績が悪く、銀行から思うように融資が受けられない会社でも、融資が受けられる可能性を高めることができるようになります。

それでも別の資金調達方法があるのではないか、私どもは考えてみます。

よく注目するのは売掛金です。

■売掛金は、担保にすることができます。それを担保に、融資を受けられないか、考えます。

その手法をとるにあたって、望ましい状態は

  • 売掛先と債権譲渡禁止特約を結んでいない、つまり取引契約書などで、売掛金は第三者に譲渡しません、という特約を結んでいない。
    →特約を結んでいると売掛金は担保にすることができません。そもそも売掛先となんの契約も交わしていなければ大丈夫です。
  • 売掛先の多くが、事業者であり、継続的な取引先である。
    →個人向けの売掛金は担保にできません。またスポットの取引の売掛金も担保にすることは困難です。(その場合、ファクタリングという手法を考えることもありますが。)
  • 売掛金の総額が2千万円以上ある。
    →売掛金の総額が小さいと金融機関が話に乗ってくれにくくなります。

※またこの手法を説明するときに、相談者の方からよく聴かれることが、「売掛先に、担保の事実を知られてしまうのではないか。」ということです。
ただこの手法を使う場合、売掛先に知られないような方法を使うので、売掛先に知られてしまうことはほとんどありません。

他の銀行が融資を出さないことを銀行はどう見るか

私の知り合いの銀行では、融資を出している企業から、3カ月ごとに、銀行ごとの融資残高を聞くようになっていました。

そうやって、その企業がつきあっている他の銀行からも、定期的に融資が出ているのかどうか、確認するのです。

そのため、他の銀行、特にその企業に対しての融資シェアが大きい銀行がしばらく融資を出していないということであれば、銀行は、自分のところだけ融資を出してその後、痛い目にあってはいけないと、融資を出さなくなるのです。

横並びでどこの銀行からも融資が出なくなる事態を避けるためには、特にメインの銀行にて、定期的に融資を受けられるようにしておくことが重要です。
メイン銀行からの信頼を大きくするためには 毎月試算表を見せて業績報告を行い、また3年~5年ぐらいの経営計画を作ってその進捗状況を見せ、常に深い関係を保てるようにしておくことが必要です。

しかし、それでもメイン銀行が融資を出さなくなる時があるかもしれません。

メイン銀行が融資を出さず、一方で多くの返済をし続けているということは、他の銀行から融資が出ていても、その返済負担を補えるほどではなく、早晩、資金繰りが破たんしてしまうことは目に見えています。

そのため、メイン銀行に融資を申し込んでも審査が通らなくなったら、融資の返済金額を圧縮する、リスケジュールの申し出を行うかどうか、検討する時期、ということになります。
その動きを先延ばしにすると、あなたの会社にある資金は、どんどん減っていくことになります。

常に、数ヵ月後の資金繰りを見据えた意思決定を経営者は行わないと、取り返しのつかないところまで追い込まれてしまうことになります。

融資受けられない+手形を切っている会社の落とし穴

1.銀行から融資が受けられない。
2.買掛金の支払いなどで手形を切っている。

このような企業は、より資金繰りに注意を払っていただきたいです。

例えば、次のような企業があるとします。

年間の売上400百万円 当期利益1百万円、減価償却費9百万円借入総額200百万円 毎月返済金額5百万円

簡易のキャッシュフロー計算式で、年間キャッシュフローを計算すると当期利益1百万円+減価償却費9百万円=年間キャッシュフロー10百万円となります。
年間返済金額は60百万円(5百万円×12ヶ月)なので、年間返済金額60百万円>年間キャッシュフロー10百万円となり、このような企業は単純に計算して、60百万円-10百万円=50百万円、現金預金が減少していくことになります。
このような企業の場合、年間で減少する現金預金50百万円は、融資を受けて補うことになります。このような融資を銀行用語でハネ資金と言います。
名目は運転資金での融資となりますが、実際はキャッシュフローで返済できなかった分を融資を受けて補う形になります。

しかし、問題はこのようなハネ資金の融資が受けられない企業です。
そのような企業の経営者として、もっともやってはいけないこと、それは資金が足りない分を、手形を多く切ることによって乗り切ろうとすることです。

例えば、現時点で支払手形が20百万円あるとしましょう。
上記例の企業で、年間50百万円の現金預金が減少し、その分を補てんする融資が受けられないとすると、やってしまいがちなのが、その不足分を、手形を切ることによって補おうとすることです。

資金不足分を手形で資金繰りすることにより、支払手形はどんどん膨らんでいき、1年後は多額の支払手形となります。行き着く先は、支払手形の不渡り→倒産、となってしまいます。

上記例の企業の場合、融資が受けられず資金繰りがまわらないのであれば、やるべきことはリスケジュール、つまり返済条件の変更を銀行に交渉することです。
毎月の返済金額5百万円を、ほぼ0円までに持っていくことができれば、支払手形を増やしていくことなく、資金繰りがまわるようになっていきます。

銀行融資はリスケジュールして毎月の返済金額を減らすことができますが、支払手形はそんなことはできません。手形ジャンプという奥の手はありますが、銀行融資のリスケジュールの方がずっとやりやすいです。

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