資金繰りで気を付けたい財務ノウハウ2

返済の延滞をするとどうなる?

銀行から融資を受けている中小企業の経営者であれば、誰でも不安に思うことは、融資の返済を延滞するとどうなるか?ということではないでしょうか。
これをお話するに、まずみなさんに、知っておいていただきたい用語があります。
それは期限の利益
期限の利益とは、例えば3,000万円の融資を5年(60か月)分割返済の条件で受けるとします。
返済の側面から見てみると、この融資を受けても、1日後すぐに全部返済しなさい、ということにはならないですよね。
60か月、月に割って50万円ずつ、返済してもらえばよいですよ、ということになります。
これを、債務者から見て1か月ごとの各期限(=約定返済日)まで銀行は返済を待ってくれて、すぐに全部返せ、とは言ってこないということなので、期限の利益、とよびます。

返済を1日でも延滞すれば、「金銭消費貸借契約書」には期限の利益を喪失する、と書いてあります。ということは、残り全部の金額をすぐに支払いなさい、ということになります。それができなければ、競売、差押え、など次の手がうたれる、ということになります。

しかし実務上は、1日延滞しただけで銀行がすぐに手をうってくることはまずないです。

  1. また延滞して、ケースバイケースですが3か月程度ほったらかしにしておくと、銀行から催告書といって、融資の返済を促す通知を送ってきます。
  2. また信用保証協会保証付融資においては、原則90日延滞すれば、一定の冷却期間をおいたうえで銀行は信用保証協会に代位弁済を請求することが可能となります。早いと延滞後6か月程度で代位弁済されます。そうなるとその後は企業と信用保証協会との交渉となります。
  3. ただ、そのような状態になっても、銀行と交渉してリスケジュール、つまり毎月の返済金額を減額する交渉を行って同意をもらえば、延滞状況が解消され、銀行の同意を得た返済金額の減額状況となり、銀行は矛先を収めてくれます。

必要なのは、何よりも銀行と向き合うことです!

銀行に、なぜ業況が悪くなって返済できなくなったのか、今後どうやって改善を行って利益体質を作って返済を再開できるようにするのか、それを書面で分かるようにして説明し、リスケジュールの応諾をもらえるように交渉します。

社会保険の分割納付交渉

(Q)
弊社は数年前に社会保険を滞納しておりました。
いろいろと催促をされまして、今は毎月銀行引き落としになっておりますので、毎月きちんと納めております。
また滞納分も毎月10万円ずつ返済しており、残り500万円弱になっております。(当時は1,000万円弱ありました)
この滞納に、遅延金が発生しておりまして、現在800万円程になっております。
金利も14%程と非常に高く 払う気にもなりませんし、払える額でもありません返済計画書を提出するようにと、書類が届きました。
やはり支払わなければならないのでしょうか?なんとか安くすることはできないのでしょうか?

(A)
社会保険料の遅延金を安くすることはできません。
少しずつでも、払っていかざるをえません。
どのように分割するか(弊社の事例では20回以上分割にできたこともあります)、返済計画書、それとそれを補完する事業計画書と資金繰り表も資料として作成し、年金事務所に相談してください。

代表者への貸付金

(Q)
資本金5,000万円・年商2億円の株式会社です。
銀行借入以外に、個人的な知り合いや、ノンバンク等からも多額の借入をしています。
しかし、決算書に記載すべき内容ではないと考え、代表者勘定で処理をしています。
しかし、返済時、利息が高額になり、代表者に対する貸付が多く残った形になります。
銀行融資に際し、代表者勘定の内容を問われた際に、上記の理由を説明すれば、納得するものでしょうか。
また、代表者への貸付は、どの程度の金額までなら決算書上、マイナスに作用せずに済むでしょうか。
代表者への貸付を清算するためには、代表者から現金を入れてもらうほかにどのような方法がありますでしょうか

(A)
知人やノンバンクから借入があり、その利息負担を会社でもった場合、代表者に対しての貸付金が多く発生していることでしょう。
このような理由を銀行に説明はしないでください。代表者が知人やノンバンクから多くの借入が多くあることが分かってしまい、銀行の目が厳しくなるだけです。
また代表者への貸付金の程度ですが、少ないに越したことはありません。
代表者への貸付金は不良資産として見られるのが普通なので、その貸付金を純資産から減らしてみてその結果純資産がマイナスとなれば、実質債務超過と見られるので、融資審査において大きな不利となります。
代表者への貸付金を清算するには、「貸付金清算プラン」といった、生命保険を使った方法を使うことが多いです。

私募債について

私募債のメリット

  • 償還が一括償還もしくは6カ月ごとなどの条件のため、資金繰りが楽になる。
  • 私募債が受けられる企業は財務内容が一定の条件を満たしている企業であり、信用力のある企業という証明になる。
  • 資金調達手段の一つである社債のノウハウを得られる。

デメリット

  • 償還時にまとまった金額が必要となるため、その準備をしておかなければならず、それができなければ融資での調達を考えなければならないが、その時に融資が受けられない場合はどうするかを考えなければならない。(これは通常の融資を受けた場合にも言えますが・・・)

融資の場合は、返済が困難となった場合リスケジュールという手段がありますが、社債ではそれがなく、デフォルト、つまり債務不履行ということになっていきます。 これらメリット・デメリットを考え、どうしても私募債を導入したいのかどうかを考えてください。

経理財務担当者の憂鬱

弊社にご相談いただく方の1割は経理財務部門の方(残り9割は経営者の方です)ですが、 そのような方々からご相談をいただいていて、いつも思うのは、
経理財務部門の方がいくら、自分の会社をなんとかしようと動いても、経営者が動かなければ、何も変わっていかない。

本当なら社長が危機感を感じて、なんとかしよう、と動いていかなければならないのに、社長よりも経理財務部門の方が危機感を感じ、動いている中小企業が多く見られます。

【しかし、経理財務部門の方はいかんせん、決裁権がありません。社長が決断してくれなければ、何も動いていきません。】
コンサルタントの私たちでも、一番難しいのは「人の考え方を変えること」です。社長の考え方が「自社をなんとかせねば」というように変わらなければ、何も動いていきません。
では、社長がいつ、そのような意識を持つか?

今月の支払いが足りないなど、本当に最大の危機状態に陥った時にしか変わらないことが多いです。

経理財務部門から社長に忠告がある時は、最大の危機に陥ってしまう前にすぐに対策をうつべき時なんです。

親戚・知人からのお金の借り方

なぜ、親戚・知人にお金を貸してほしいと頼んでも、断られてしまうのか。
お金を貸してほしいと言われる方の立場から見ると、分かるでしょう。
お金を貸してほしいと言われたら、まず考えるのは、「本当に返ってくるのか?」です。
では、親戚・知人が最後の頼みの綱で、お金を貸してほしいと頼む際に、貸してくれやすい頼み方、貸してくれにくい頼み方、を考えていきます。

貸してくれにくい頼み方:
ただ単に「お金を貸してください。」と言うことです。 「どうやってお金を作るか、何も具体策がないじゃないか。本当に返ってくるのか?」と疑問に思うのが普通でしょう。

貸してくれやすい頼み方:
次の資料を用意します。

  • 自分の会社をどうやって立て直していくのかを書いた経営改善計画書。そこにはむこう3年ぐらいの月次損益計画と月次資金繰り表を入れる。
  • その資金繰り表をもとに、親戚・知人から借りたお金をどうやって返していくかを書いた返済計画。
  • 借用書

お金を貸してほしいと頼まれた親戚・知人としては、返済計画があり、またその根拠が経営改善計画や資金繰り表で分かりますので、貸したお金が返ってくることの不安が少なくなります。
また借用書を交わし、どうやって返していくかをその借用書の中で書いておくことによって、貸した方としてはお金が返ってくることに確信を持てます。

このようなものを用意してお金を借りに行くのとそうでなくお金を借りにいくのとでは、相手の受ける印象は大きく違うでしょう。 大金を借りようとするのですから、借りるための準備はしっかりするべきです。

親戚・知人からお金を借りるのは、最後の手段です。

×決して、赤字を補てんするために使ってはなりません。
銀行へ返済するために使ってはなりません。
赤字補てんや銀行返済のために使うと、またすぐに、「お金が足りなくなった。どこか借りることないか。」ということになってしまいます。

会社立て直しのために大事に使うようにしてください。

融資を希望金額どおりに出させる方法

私たちが多く受ける相談の一つに、
「融資は受けられたが、希望金額より少ない金額になってしまった。」というものがあります。
ここで、銀行員の心理を考えてみます。

  • 銀行の審査において、融資が出る金額というのは、これだけは絶対に出る、というものはありません。
    なんとなくこれだけ出る、というものです。結構、感覚で決めるところが大きいのです。
  • また、企業から言われた融資希望金額より少ない金額で審査を通すと、後に万が一貸し倒れとなった場合、上から審査の適切さを問われても、「今回は貸し倒れとなったが、審査はしっかり行った。」
    という言い訳がしやすくなります。貸し倒れの事態も想定して、希望金額より少なくして審査を通した、という言い訳がしやすくなります。

では企業としては、どうしていけばよいでしょうか。

単純に、経営者が本当に希望する金額より多めの金額を、融資希望金額として銀行に伝えることです。
2,000万円を融資してほしいのなら、そのまま2,000万円を融資希望金額として伝えると、減額して1,500万円や1,000万円にされやすいです。
それであったら、希望金額を3,000万円で伝えてみます。
そうすると、減額されて、実際に経営者が希望する金額ぐらいは出る可能性が高くなります。
このような話を聞いて、経営者としては、なんて単純なんだ、と思うのかもしれません。
しかし実際には、結構効果があるのがこの方法です。

売掛金がひっかかった時

事業を行ってくると、つきものの問題が、売掛金が回収できない、という問題です。
売掛先が事業を継続している状況で、入金期日に入金がなかったら、その入金があるまでは、その売掛先への販売をストップしたり、もしくは下請けをストップさせたりして、これ以上の売掛金未回収をおこさないようにする対策が考えられます。

しかし現実問題、自社内の、その売掛先への売上ウェートが高かったりすると、なかなか簡単に割り切れないものでしょう。そして売掛金をどんどんふくらませて、結局売掛先が倒産してしまったら、大きな金額を引っ掛かってしまうことになります。

このようなケースにそなえ、やはり売上先を分散させることは必要です。特定の1社や2社への売上ウェートが高かったら、その企業が倒れたら自社も共倒れとなります。そういう事態を防ぐために、売上先の分散は、リスクを抑える上で重要な対策です。

では、売掛先が倒れ、実際に売掛金が引っ掛かってしまったら、どうしたらよいでしょうか。

この場合に、銀行に運転資金の融資を申し込みますが、いつも運転資金の融資を申し込むときみたいに、わざわざ売掛金が引っ掛かったことを銀行に言わず、融資を申し込む方がよいです。

ただ銀行に売掛金の引っ掛かりを気付かれないようにするのは、その銀行からまだ融資が受けられている状況の場合であり、リスケジュールを行っていたりしてその銀行からいっさいの融資が受けられていないのであれば、リスケジュールの継続など銀行の協力をもらうために、あえて売掛金が引っ掛かった事実を企業側から伝えた方がよかったりします。

ちなみに、売掛金が引っ掛かった場合への備えとして、中小企業総合事業団の、経営セーフティ共済というものもありますので、備えとしてかけておくことも考えておいた方がよいでしょう。

経営セーフティ共済→ http://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/

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