日本政策金融公庫と民間銀行とのバランス

<質問>

最近の「日本政策金融公庫」との付き合い方についての質問です。
現在の弊社の概況をお知らせすると 都銀、地銀、地元第2地銀、信金及び政策公庫との取引があります。少々オーバーバンキング気味ですが、メインは地銀です。
毎期決算明け早々に年間の「ハネ資金」(※企業が事業で稼ぐ現金内では返済をまかなえずに資金が減少していくため、それをまかなうための融資のこと)をいずれかの銀行でお世話になっています。
それぞれの借入金額は、せいぜい正常運転資金の範囲前後で、できるだけ分散化をはかっています。借入総額は年商の約4~5割です。 これまではメインバンクの借入総額が一番多かったのですが、今回はそのタイミングがずれて来期借入後の来期末決算では、政策公庫の残高が一番多くなってしまいます。
将来の設備投資などの点を考えるとメイン行のプロパー融資や信用保証協会保証付融資よりも、何となく政策公庫での実績を重視した方が良いような気がしますが、一方で「いざという時のための銀行」として融資枠を確保(あえて来期は借りない)という選択肢もあります。

状況説明が長くなりましたが、他行(地銀など)を意識した「政策公庫との付き合い方」に留意点などがありましたらアドバイス下さい。 因みに幸いなことにこの7~8年は黒字決算で、今期も黒字化の見込みです。
(K様)

<回答>

日本政策金融公庫は、政府系金融機関ですが、銀行は、政府系金融機関をどう見ているか。それは、民間の銀行ではまかないきれない融資を補完してくれる金融機関、と見ております。
そのため、政府系金融機関の融資残額が一番多くなろうと、そういったことは、民間の銀行としてはたいして気にしていないものです。

あなたがおっしゃるように、将来を見据えて「総額ここまでの融資を借りたことがある」という実績を付けておくために、政策公庫から借りるという選択肢もありでしょう。政策公庫としても、民間の銀行としても、融資審査において必ず見るのが、「ここ2~3年において、この会社に一番、融資の総額が多くなった時はどれだけ融資をしていたか」です。

例えば、ある銀行が1年半前に、ある会社に融資総額が82百万円までなっていたとします。現在の融資総額が58百万円であれば、82-58=24、24百万円の融資が、出しやすくなります(業況が悪くなっていなければですが)。
こういう意味で、借入実績を付けておくと、その後の融資が受けやすいことになります。

また政策公庫は、中小企業の育成のための金融機関ですので、民間の銀行よりも融資審査が通りやすく、いざという時のために今はあえて借りないでおく、という選択肢もあるでしょう。
ここまで述べたように、政策公庫のような政府系金融機関の融資残高がどうであるか、民間の銀行はたいして気にしていないものです。分けて考えてよいでしょう。

銀行との融資交渉の秘訣

私たちが、多くいただく質問の一つに
「明日、銀行と融資交渉をするが、こんなことを言ったら審査が通りやすくなる、もしくは通りにくくなる秘訣があるのか?」というものがあります。

答えは、そのようなものはありません、ということになります。
作成された稟議書は、次の順番で回覧されていきます。

1.支店長で決済できる融資の場合 得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長(決裁)

2.支店長で決裁できない融資の場合 得意先係の行員→得意先係の係長→融資係の行員→融資係の係長→次長→支店長→審査部(本部)の行員→審査部の部長(決裁)

ここで重要なのは、稟議書は書面で回覧される、ということです。

※書面で回覧されるということは、稟議書作成時に、稟議書に盛り込まれる内容が審査を大きく左右する、ということです。
あなたの融資交渉の交渉相手の行員が稟議書を作成しますが、交渉にあたって、融資を通りやすくしてもらおうとあなたが自社のアピールを「口頭」で行ったとします。

しかし、交渉相手の行員は、その全てをメモし稟議書に書くことは難しいでしょう。

融資交渉であなたの会社をアピールするときに、「口頭」で行うのではなく、「書面」で行うのです。 また融資申込も口頭で行うのではなく、「借入申込書」を作成し書面で行う方がよいでしょう。その方が、融資の希望条件を明確な形で銀行に伝えることができます。

アピール材料としては、事業計画書が一番強力なものとなります。
口頭で「自社の売上は今期は前期に比べ2割アップする」といっても、相手は聞き流すぐらいですが、事業計画書でそれがうたわれ、売上がアップする根拠を銀行が理解しやすいように書くと、口頭で伝えるより、よっぽど効果があります。 そのような書面で書かれたものは、稟議書に添付資料として添付されます。 ということは、審査を通しやすくするにあたってあなたが伝えたいことが、融資決裁者である支店長や審査部部長までしっかり伝わる、ということです。

融資審査を有利にすることをいかに書面で伝えるが重要です。

メイン銀行の融資を他の銀行で借換えしてよいものか

<質問>

銀行からの借入についての相談です。
年間売上は前期1億5000万円ですが今期は1億1000万円になりそうです。
現状、日本政策金融公庫(旧国民生活金融公庫)から2500万円と銀行から3500万(2本)の借入があります。N銀行においては、今年の2月に借換を行ったばかりです。
上記の状況及びN銀行の対応等から今後の新規融資は難しいと思っていたのですが、先日短期融資等で取引のある信用金庫からN銀行からの借入+新規分で借換をしないかといわれました。
過去10年近くメインバンクとしてつきあってきたN銀行から信用金庫に借入先を変えて良いものか悩んでいます。
(F様)

<回答>

N銀行借入分を信用金庫へ借換えするのはだめです。その後、N銀行からスムーズに融資を受けられなくなることでしょう。
この場合、もし借換えが行われたとしたら、N銀行としては、あなたの会社から裏切られた、という思いを持ちます。
それだけ、銀行としては融資を他行に借換えられるのは、屈辱なことなのです。
あなたの会社が、N銀行と取引解消するつもりなら別ですが、そうでないなら借換えはやめてください。

運転資金の種類について

銀行からみた【運転資金】の分類を参考にしていただいて、資金繰りの悩みから少しでも解放されて、今後の銀行との関係を良化するようにしましょう。

・銀行が融資するときの【運転資金】は1種類ではありません、
・お金に色はありませんが、銀行が融資するお金には青・黄・赤の3色あります。
・貸したい(青色)融資
・積極的に貸すことはないが貸してもよい(黄色)融資
・貸したくない(赤色)融資

・では銀行での【運転資金】の「資金目的」には、どんなものがあるのでしょうか?
1番:経常運転資金 (売上を現状維持する場合に恒常的に必要な仕入・経費等の支払資金)
2番:増加運転資金 (売上が増加する場合や決済条件に変化が生じた場合に必要となる資金)
3番:賞与資金 (夏期・冬期のボーナス資金)
4番:決算資金 (決算時に必要な納税、株式配当、役員賞与、等)
5番:季節資金 (季節によって商品仕入等が増加するときに必要となる資金)
6番:その他運転資金 (手形決済資金、買掛金決済資金、赤字による経費支払資金、等)

1番・2番は
3番・4番・5番は
6番は (青色)貸したい融資
(黄色)積極的に貸すことはないが貸してもよい融資
(赤色)貸したくない融資

その上限を判定する基準が、『正常な運転資金』という呼び名の【運転資金】です。
「正常でない運転資金」だと判定されたら借入はできません。
借入を実現するためには、『正常な運転資金』として判定されなければならないのです。

※その計算式は・・・  売上債権(売掛金+受取手形(割引・裏書譲渡手形は除く))
+在庫(不良在庫を除く)
-仕入債務(買掛金+支払手形(設備支払手形を除く))

以上の金額が、1番:経常運転資金であり、すべての金融機関を合計して借入が可能となる計算上の上限金額となります。
また2番:増加運転資金は、売上債権の増加額+在庫の増加額-仕入債務の増加額が、計算上の上限金額となります。
1番・2番の場合は、企業が存続する限り必要な資金となりますから、できるだけ自己資本でまかなうのが理想ですが、ほとんどの企業の場合は借入金でまかなっていることでしょう。
ですから、長期借入資金というよりも、むしろ永久に必要な資金ということになり、〔借りっぱなし〕になってもおかしくありません。
ならば、借入をするときに、元金返済をゼロにできたほうが資金繰りの不安・心配は、大幅に減少することになります。
当座貸越・手形貸付(極度)での借入を実現するようにしましょう。
いずれの借入方法でも、毎月の金利支払いと一部印紙代でOKです。

3番~5番については、『正常な運転資金』としての基準は適用されませんが、目的・金額・返済方法が決まっていますので、資金の目的の証拠があれば、1番・2番の運転資金がいっぱいの場合でも、融資は可能となる場合があります。
ただし、3番~5番の資金については原則6ヶ月以内に返済するルール(場合によっては9ヶ月~12ヶ月)がありますので、手形貸付(都度)扱いが一般的です。
ちなみに6番については、ほぼ借入ができないと考えてください、借入可能となるのは、保証協会付の別枠融資や緊急保証の場合です。

■運転資金の借入時期等について
1)資金繰り予想表を作成し、資金の必要な月の3ヶ月前に申込む。
銀行には、融資したい時期と融資をしたくない時期があります。
1ヵ月前に申込んでも銀行の貸したくない時期に当たると、計画通りに借入できないケースが多数発生します。
また、余裕をもって申し込んでおくことによって、次年度から銀行から営業に来る確率が高くなります。
ですから、資金繰り予想を立てるということは、事業継続には必要不可欠なのです。
2)1行ではなく、数行同時に申込みを行う。
1つの銀行で申し込んで、断られてから次の銀行に申し込むと、余分な時間がかかります。
タイム・イズ・マネーですから、数行同時に申し込んでください。
万が一全部の銀行から借りてくれという回答が来たら、ありがたい悩みとして、楽しみながら借入する銀行を選択してください。

3)3番~5番については、支払う時期がほぼ確定していますから、必ず、決算期の3か月前、賞与支給月の3ヶ月前に申込みを行いましょう。

経営者は腹をくくれ

「銀行から資金調達ができず、資金繰りが苦しい場合にどうしたらよいか。」

絶対にだめなのは

×金利が10数%もする商工ローンやヤミ金から借りること。
×会社に関係のない第三者を保証人にしてまでお金を借りようとすること。迷惑をかける人を増やしていくだけです。
×買掛金や給料の支払いを遅らせようとすること。最終的にはやむをえないとしても、それはあくまで最終手段として考えましょう。

資金繰りを円滑にまわしていくにはどうすればよいか、それを考えることが優先順位としては一番になります。

そのために、すぐにできる手段があります。
それは、リスケジュール。つまり、銀行に融資の返済を緩和してもらうことです。

■このリスケジュール、経営者としてはその決断に、勇気がいることでしょう。
これは、もう経営者の決断しかないです。誰が決断してくれるでもなく、経営者だけです。決断できるのは。
■経営者では決断ができず、危機意識がない他の役員に聞いてみて「もう少し様子を見よう」と言われ、何の手立てもとらず、資金繰りが破綻してしまった企業。
■5社や10社のコンサルタント会社で相談してどこからも「リスケジュールしかないですね。」と言われても、どこかで「究極の裏技があるだろう。」とさまよい続ける経営者。

私が、今まで多数の中小企業経営者から相談を受けてきて、そのような企業を見てるから、実感をこめて言えます。決断が一ヶ月遅れると、それだけ現金を失い、再生が困難になります。

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